こんにちは。私は広東省出身の日中ハーフです。3歳まで中国広東省で過ごし、その後日本で育ちました。よく「広東語と中国語って何が違うの?」と聞かれますが、実は想像以上に大きな違いがあります。
今回は、幼少期の記憶と実体験を通して感じた広東語と中国語(標準中国語・普通語)の違いについて、リアルな視点でお話しします。同じ「中国語」と呼ばれても、実際は別言語と言えるほどの違いがあるんです。
私自身、日本の深セン大学への語学留学で中国語を学び直した際、「これは私が知っている広東語とは全然違う」と強く感じました。そんな体験も含めて、両言語の違いを具体的に解説していきます。
広東語と中国語の基本的な違い|地域と歴史の背景

広東語はどこで話されている?地域の特徴

広東語は主に香港、マカオ、そして中国の広東省で話されています。私が生まれ育った広東省東莞も、もちろん広東語圏です。ただ、正確にいうと広東語の中でもなまった広東語を話す地域で生まれました。海外では、カナダのバンクーバーやアメリカの一部地域でも話されています。
香港の映画やドラマを見たことがある方なら、その独特な響きを聞いたことがあるでしょう。ジャッキーチェーン作品でも、広東語がはなされていますね。実は香港で話されている言語こそが、私たちが「広東語」と呼んでいるものなのです。
広東語の話者数は世界で約8000万人とされています。中国語(普通語)の話者数が約14億人以上といわれていますから、比較すると少数派ですが、その影響力は決して小さくありません。
※参照:【2024年最新版】世界の言語ランキング(ネット人口含む)
中国語(標準中国語・普通語)との歴史的違い

中国語として一般的に学ばれているのは「普通話」と呼ばれる標準中国語です。これは北京語をベースに北京語の方言を取り入れて作られた共通語で、中国全土で公用語として使われています。
一方、広東語の歴史は非常に古く、唐の時代に遡る古い中国語の形を色濃く残しています。そのため、古典中国語の発音に近い部分が多く、言語学的にも貴重な存在です。
しかし、中国政府の言語政策により、学校教育では標準中国語(普通話)が主流となっています。香港では広東語が強い文化的アイデンティティを持ち、教育やメディアで広く使用されているため、若者も日常的に広東語を話す傾向が強いです。ただし、香港でも普通話の授業が増えるなど、標準中国語の影響は徐々に広がっています。
実体験で感じた言語の違い|広東語の発音・声調・語彙の具体例

広東語と中国語の発音と声調の驚くべき違い

広東語の最も特徴的な違いは、声調の数です。標準中国語が4つの基本声調なのに対し、広東語には6つから9つの声調があります。私は幼少期、この複雑な声調を自然に身につけていました。
例えば「ありがとう」の表現で比較してみましょう。標準中国語では「謝謝(xiè xie)」ですが、広東語では「多謝(do1 ze6)」や「唔該(m4 goi1)」と言います。発音も声調も全く違うのです。
「おはよう」のあいさつも大きく異なります。標準中国語の「早上好(zǎo shàng hǎo)」に対し、広東語では「早晨(zou2 san4)」です。私は日本に来てから中国語を学び直すまで、これらが同じ意味だとは知りませんでした。
特に印象的だったのは「こんにちは」です。標準中国語の「你好(nǐ hǎo)」は広東語でも「你好(nei5 hou2)」ですが、発音が全く違います。広東語の方がより鼻音が強く、独特な響きがあります。
広東語と中国語の語彙と表現の違い|日常会話での実例

日常会話でよく使う単語も、広東語と標準中国語では大きく異なります。例えば「美味しい」という表現では、標準中国語の「好吃(hǎo chī)」に対し、広東語では「好食(hou2 sik6)」を使います。
数字の読み方も違います。「7」は標準中国語で「七(qī)」ですが、広東語では「七(cat1)」と発音します。私の祖母がよく「cat, baat, gau」(7、8、9)と数えていたのを覚えています。
面白いのは、広東語には独特のスラングや表現が豊富にあることです。「咁啱(gam2 ngaam1)」は「ちょうど良い」という意味ですが、標準中国語には直接対応する表現がありません。
また、広東語は悪口も独特で、「仆街(puk1 gaai1)」(クズ野郎」といった悪口)などは香港映画でよく聞く表現です。これらの言葉は標準中国語話者には理解できません。私も日本で中国系の友人と話すとき、つい広東語の表現を使って困惑される経験があります。
広東語と中国語の文法構造の根本的な違い

文法面でも、広東語と標準中国語には重要な違いがあります。疑問文の作り方が特に異なり、広東語では文末に「咩(me1)」や「呀(aa3)」をつけることが多いのです。
例えば「これは何?」を表現する場合、標準中国語では「這是什麼?(zhè shì shén me)」ですが、広東語では「呢個係乜嘢?(ni1 go3 hai6 mat1 ye5)」となります。語順も単語も全く違います。
動詞の活用も異なります。「食べる」という動詞で比較すると、標準中国語の「吃(chī)」に対し、広東語では「食(sik6)」を使います。過去形の表現方法も、標準中国語の「了」に対し、広東語では「咗(zo2)」を使うことが多いのです。
私が特に印象的だったのは、助数詞の使い方です。広東語では「個(go3)」という助数詞を非常に多用しますが、標準中国語ではより細かく使い分けます。この違いにより、私は日本で中国語を学ぶとき、助数詞の使い分けに苦労しました。
翻訳アプリで見る現実的な問題

現在、グーグル翻訳などの翻訳アプリでも広東語に対応していますが、精度にはまだ問題があります。特に音声認識機能では、広東語の複雑な声調を正確に認識できないことが多いのです。
私が試した無料の翻訳アプリでは、精度が完璧で発音もきけるアプリはあまりないのかなと感じました。
広東語の辞書アプリも限られており、ピンイン(発音記号)も標準中国語とは異なるシステムを使います。広東語では「粤拼(jyutping)」という独自のローマ字表記法が使われているのです。
私はスマホで打つときは、中国語の簡体字をピンイン入力で使用していますが、広東語は入力方法がわかりませんし、使用したことはありません。親戚や母とやり取りする際には、中国語(普通話)簡体字でやり取りしています。
簡体字で母とは話は普通に通じます。
また、広東語を日本語に直接翻訳するアプリはほとんどなく、多くが一度英語や標準中国語を経由する必要があります。これにより、ニュアンスが失われることも多いのが現状です。
百度翻译の中国語から広東語翻訳で音声も聞けるので参考にして聞いていますが、実感値として精度は100パーセントではないですが、簡単な単語とかだと、広東語も普通話も音声はかなり精度がよくて発音も標準的に聞こえますね。
簡単な実例を動画でご紹介いたします。
学習における実践的な広東語学習のアドバイス

広東語の勉強を始めたい方には、まず基本的なあいさつから覚えることをお勧めします。「早晨(おはよう)」「午安(こんにちは)」「晚安(おやすみ)」などの日常表現から始めると良いでしょう。
発音練習では、香港のドラマや映画を見ることが非常に効果的です。私自身、日本に来てから広東語を忘れないよう、定期的に香港映画を見ています。特に古い香港映画は、純粋な広東語が使われているので学習に最適です。
教室で学ぶ場合は、できるだけ香港出身か広州出身のネイティブ広東語の先生を選ぶことをお勧めします。広東省出身の先生でも良いのですが、現在の広東省では標準中国語の影響を受けた広東語を話す人も多いためです。
最後に、広東語学習で最も重要なのは「恥ずかしがらないこと」です。複雑な声調を持つ言語なので、最初は発音が難しく感じるかもしれません。しかし、私の経験上、間違いを恐れずに積極的に話すことが上達への近道です。
私の実体験を通して、広東語と中国語の違いについてお話ししました。同じ「中国語」という名前でも、実際は別言語と言えるほど大きな違いがあることを理解していただけたでしょうか。
これから広東語に興味を持たれた方は、ぜひ香港の文化とともに学んでみてください。きっと新しい世界が開けることでしょう。
広東語と中国語の違い|記事の重要ポイント10選

✅ 1. 地理的分布の違い:
広東語は香港、マカオ、広東省で話され、海外ではカナダ・アメリカでも使用。話者数約8000万人vs中国語14億人以上だけど、経済的影響力は大きい。
✅ 2. 歴史的背景の根本的違い:
広東語は唐時代の古い中国語を保持し古典に近い。標準中国語は北京語ベースの現代共通語。言語学的価値が大きく異なる。
✅ 3. 声調システムの複雑さ:
標準中国語4声調に対し広東語は6-9声調。幼少期に自然習得した複雑な音体系が、両言語の根本的違いを生み出している。
✅ 4. 基本挨拶の完全な違い:
「ありがとう」:標準中国語「謝謝」vs広東語「多謝・唔該」。「おはよう」:「早上好」vs「早晨」。発音も意味も全く異なる表現体系。
✅ 5. 日常語彙の大幅な相違:
「美味しい」:「好吃」vs「好食」、数字「7」:「七(qī)」vs「七(cat1)」。日常会話の基本単語レベルで完全に異なる語彙を使用。
✅ 6. 文法構造の根本的違い:
疑問文で「咩・呀」を多用、「これは何?」の表現が「這是什麼?」vs「呢個係乜嘢?」と語順・単語が完全に異なる構造。
✅ 7. 翻訳アプリの限界と課題:
複雑な声調認識の困難さと、独自のローマ字表記法「粤拼(jyutping)」使用による技術的課題。
✅ 8. 世代間・地域間の使用状況変化:
中国政府の言語政策で広東省の若者も普通話を話すように。ただ広東省では、地域にもよりますが、街中を歩くとまだまだたくさんの広東語が聞こえてきます。香港では文化的アイデンティティとして維持されているが、標準中国語の影響も拡大中。
✅ 9. 学習方法の実践的アプローチ:
基本挨拶から開始、香港映画・ドラマ活用、香港出身教師選択、恥ずかしがらない積極的な発話練習が効果的な学習法。
✅ 10. 日中ハーフ特有の言語体験:
幼少期の広東語環境から日本での標準中国語学習時の「これは私が知っている言葉とは違う」という実感。同じ「中国語」でも別言語レベルの違いを実感。
以上、私の実体験を通して、広東語と中国語の違いについてお話ししました。同じ「中国語」という名前でも、実際は別言語と言えるほど大きな違いがあることを理解していただけたでしょうか。
地域によっては、広東語だと全く通じない中国人がいたり、まったく別の言語といっていいくらい違います。
事実、中国人に広東語を話しても全くわからないといわれることもあります。
これから広東語に興味を持たれた方は、ぜひ香港の文化とともに学んでみてください。複雑な声調や独特な表現に最初は戸惑うかもしれませんが、その分だけ新しい言語の世界が待っています。
広東語を学ぶことで、香港映画がより楽しめるようになり、広東語圏の人々とのコミュニケーションも深まるでしょう。きっと新しい世界が開けることと思います。私も中途半端な広東語能力ですが、少しずつ勉強していきたいと思います。
以上最後までお読みいただきましてありがとうございます。
YouTubeでは、実際に中国語(普通語)と広東語の発音の違いや、日中ハーフあるあるなどもご紹介していますので、
よかったら見ていってもらえると嬉しいです!
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